遊び込み療法とは
遊びはコミュニケーションの坩堝(るつぼ)、身振り手振り表情、言葉掛け、様々なコミュニケーションツールで互いの意思疎通が図られます。落ち着いた1対1の環境ではみんなちゃんと言葉を話し意思疎通は可能です。重要なことはこの1対1の関係を小集団に拡大させることです。
そして人・音・空間・時間・言葉かけが構造化された小集団の中で毎日人と人が時間をかけて自由に楽しく「遊び込む」ことで自然な対人コミュニケーションの機会が生まれれば”人は頼れる”、”人は信じられる”、”人から愛される”・・・と人への「安心」と「信頼」と「愛着」が生まれるのです。
遊び込み療法とは小集団の自由な「遊び」と「配慮された環境」の下、人・音・空間・時間・言葉の構造化を実現することで人と「関わる力」や音・空間・時間・言葉に「馴染む力」を育て、持てる特性を才能へと開花させる療法なのです。
遊び込み療法 実践編
5つの構造化支援
彼らを小集団に馴染ませるための5つの構造化支援 ”人・音・空間・時間・言葉”を構築します。
①人の構造化(誰と過ごすか)
- スタッフの構造化(誰が支援するか)
支援スタッフは保育士、生活支援員(音楽・芸術)、作業療法士、看護師、医師を配置しています。
保育士がホームルーム担当となり副担任と2人体制で6つの教室を維持します。
2歳~6歳までホームルーム担当スタッフは変わることなく同じスタッフが同じホームルームを卒園まで続けます。
どの子を誰が支援するか、まず担当者の構造化です。屋外の運動場、滑り台、ブランコ、鉄棒コーナーはホームルームごとに利用します。 - 利用児の構造化(どの子と過ごしてもらうか)
年齢は2歳~6歳の未就学児で異年齢集団を作ります。人に敏感な彼らが苦手なのは同年齢のお友達です。異年齢であることで年下には年上に、年上は年下に優しくできます。性は男女混合です。
人数は4~5人の小集団を作ります。
人の構造化を実現することで苦手な人との関わりに自然に馴染み「対人的耐性を育てる」ことができると考えます。
②音の構造化(誰と何人で過ごすか)
音は彼らを小集団に誘い込むとき一番配慮すべき課題です。隣家の帰宅した車の音がうるさい、近くの幼稚園児の声がうるさい、大声、怒鳴る声、女子高生のキャーキャー声がうるさいと生活音から人の声に至るすべての音を敏感に拾い反応します。就学期の小学校では騒音の嵐が吹いています。その中に彼らを座らせることが音の構造化の最大の到達目標です。
音は人が作る、人の数でうるさいか、静かか決まります。
そこでうるさい空間、静かな空間、うるさい時間、静かな時間を構造化の中で作ります。
一日の音の流れを構造化し、家庭からきたばかりの朝の登園時は静かな時間と空間で静かな遊び込みメニューを作り、一日に一度必ず超うるさいホールで20分遊び込み、降園時は再び静かな遊び込みメニューを作り、音の構造化を図ります。
年間の音の流れの構造化は新しい利用児が集まる4月は静かな空間、静かな時間を構造化、翌年3月、卒園の頃までに徐々にうるさい空間、うるさい時間へと構造化し、きたるべき小学校への対応を図ります。
音の構造化を実現することで一番苦手な音との関わりに自然に馴染み「音への耐性を育てる」ことができると考えます。
③空間の構造化(誰とどこで過ごすか)
空間の構造化は、「どこで過ごすか」です。当院では「小集団教室」、「一人教室」、「大集団教室」、「モノづくり教室」、「音楽教室」、「屋外」、「運動場」、「遊具」、「森」など様々な空間で体験をさせることにより、社会的経験を育てることを行っております。静かな空間からにぎやかな空間まで、を時系列で構造化し、社会で遭遇する多種多様な空間に対応できるよう育てます。
④時間の構造化(誰といつどのように過ごすか)
時間には、一日・週・月・年と流れがあります。時間の構造化とは、
- 時間(日・週・月・年間)の流れを作る
- 小集団で遊ぶことで静かな時間を作る
- 大集団で遊ぶことでうるさい時間を作る
それぞれの時間の切り替えは、「チャイム」で時間の構造化を図り、スケジュールの進行を告げる仕組みを作ります。
一日の流れで配慮することは、その日の支援開始時間・支援終了時間には毎日決まった遊び込み、ルーティンの遊び込みメニューと静かな遊び込みメニューを組み入れることです。
しかしながら、時間は常に変化するものです。
- 週の初め、週の半ば、週末
- 月は「春」「夏」「秋」「冬」
- 日々の変化・変更や中止への対応
- 雨天、曇り、晴天、雪、台風
- 気温、湿度、気圧、日の入り、日の出
「音の構造化」でご説明の通り、「静かな時間」~「騒がしい時間」~「静かな時間」を作りながら、一日のスケジュールを構造化して、利用者の時間を構造化した中で活動し、また年中行事や発表会などの想定外の耐性を育てる支援を行います。
⑤言葉の構造化(誰にどんな指示・声掛けをするか)
私たちが彼らに意思をつたえるとき最大の配慮を払わなければならないのが言葉の構造化です。
ある人は曖昧な声掛け、ある人は上からの強い声掛け、ある人は優しい声掛けなど、その特性に合った声掛けが必要となります。
発達障害は自閉症やアスペルガー障害にAD/HDが併存していることが多いため、指示声掛けには特別な配慮が必要で、彼らがが戸惑い悩みキレる理由がそこにあるのです。
彼らは迂闊な指示声掛けに敏感です。それはすべて合理的配慮を欠いた、自分では気づかない人への迂闊な指示声掛けと考えます。
彼らは行き過ぎた指示や自分の勝手な考えでの声掛けではその一瞬にキレるのです。
- 自閉症の悩みは・・・
- スケジュールを決める指示声掛けがない
- 思い付きで行動し指示がない
- 暇な時間が多くてすることの指示声掛けがない
- ものの位置、順番を簡単に変えて事前事後の声掛けがない
- 予定をコロコロ変え事前告知がない
- 放りっぱなしで具体的な声掛けがない・・・です。
- アスペルガー障害の悩みは・・・
- 曖昧、適当、理不尽な言葉を吐く
- 約束を破る、うそをつく
- 不平等、納得できない言葉が多い
- エコヒーキ、差別、特別扱いする言葉遣いが多い
- 言うことがコロコロ変わる、喋りが早すぎる
- A先生の言うことを聞いたら、B先生がそれは違うと言う
- まだなの早くしなさいと急かされる
- 納得がいく説明がもらえない
- 指示が欲しいのに指示がない
- だから毎日をどう過ごしていいかわからない・・・です。
- AD/HDの悩みは・・・
- 馬鹿にした言葉遣いをする
- 上から目線でいろいろ言う
- 不機嫌そう言う
- 行動をとやかく言う
- 口うるさく指示してくる
- 自分の考えを押しつける言い方をする
- "イラッとする"音や声掛け
- うるさい声、大声で笑い喋る
- 勝手にベラベラよく喋ってうるさい・・・です。
言葉の構造化を実現することで社会が作る迂闊な声掛けに自然に馴染み「人の言葉や指示声掛けへの耐性を育てる」ことができると考えます。